マンションの大規模修繕工事が近づいてくると、管理組合の理事は否応なしに「コンサルタント選び」という壁にぶつかります。私もそうでした。
三浦和也と申します。東京都内の築28年・120戸の分譲マンションに16年ほど住んでいます。管理組合の理事を3期務め、うち1期は理事長を担当しました。ちょうどその理事長時代に、2回目の大規模修繕工事の検討が始まったんです。
修繕コンサルタントの選定は、正直なところかなり悩みました。管理会社の紹介をそのまま受けるべきか、自分たちで探すべきか。そもそも何を基準に比較すればいいのか。修繕のプロではない一般住民にとって、判断材料が少なすぎました。
この記事では、私が修繕コンサルの選定過程で株式会社T.D.Sを候補に入れた理由と、最終的にどう判断したかをお伝えします。大規模修繕を控えている管理組合の方に、少しでも参考になれば幸いです。
目次
大規模修繕のコンサル選びが始まった経緯
築28年・2回目の修繕は前回とは状況が違った
私たちのマンションが1回目の大規模修繕を実施したのは築12年のとき。このときは管理会社の紹介で施工会社を選び、いわゆる「責任施工方式」で進めました。特に大きな問題はなかったものの、当時の理事たちからは「管理会社任せで比較検討が不十分だった」という反省の声が残っていました。
2回目の修繕が視野に入ってきたのは築25年頃です。外壁のひび割れやタイルの浮き、防水層の劣化など、目に見える変化が増えてきた時期でした。前回の反省を踏まえて、今回は「設計監理方式」で進めようという方針が理事会で固まりました。
設計監理方式とは、コンサルタントに調査診断・設計・施工会社選定の支援・工事監理を委託する方式です。施工会社とは別の第三者が管理組合をサポートするため、工事内容や費用の透明性が高まるメリットがあります。一方で、コンサルタント費用が別途発生する点は住民への説明が必要でした。
株式会社ヨコソーの解説記事によると、設計監理方式は「設計」と「施工」を分離することで競争入札を導入しやすくなり、工事費の適正化にもつながるとされています。
修繕委員会の立ち上げと役割分担
理事会の決定を受けて、理事と一般住民の有志を含む修繕委員会を6名で立ち上げました。委員のうち2名は建設業界の経験者。残りの4名は私を含め、まったくの素人です。
委員会の最初の仕事が「コンサルタント候補のリストアップと選定」でした。国土交通省のマンション管理に関するページではガイドラインや相談窓口が公開されており、まずはここで大規模修繕の基本的な考え方を委員全員で共有するところから始めました。
国土交通省は大規模修繕コンサルタントの利益相反行為にも注意を喚起しています。施工会社との癒着や不正なバックマージンが報道されたケースもあり、管理組合としてもコンサルの中立性は慎重に見極めなければなりません。そのことを委員全員が共通認識として持った上で、候補探しに進みました。
修繕コンサルの候補をどうやって探したか
管理会社の紹介だけに頼らない方針
管理会社からは当然、提携先のコンサルタントを紹介されました。ただ、前回の「管理会社任せだった」という反省があったので、管理会社の紹介はあくまで候補の一つとして扱い、自分たちでも独自に探す方針を取りました。
探し方はいくつかのルートを併用しています。
- 近隣マンションの管理組合への聞き取り(過去に大規模修繕を経験した組合)
- インターネットでの情報収集(各社の公式サイト、口コミサイト、掲示板)
- マンション改修設計コンサルタント協会(MCA)の会員リスト確認
- マンション管理に詳しい知人への相談
特にネットでの情報収集は重視しました。各社の公式サイトで実績や体制を確認するだけでなく、実際に利用した管理組合の声も可能な限り集めています。企業の口コミサイトで社員の声を確認したり、マンション管理系の掲示板で利用者の体験談を読んだりと、公式情報だけでは分からない部分も調べました。
比較検討のために作った5つの評価基準
候補を比較するには共通の物差しが必要です。修繕委員会で議論した結果、以下の5項目を評価基準として定めました。
| 評価項目 | 重視した理由 |
|---|---|
| 実績件数と規模感 | 120戸規模のマンション修繕経験があるか |
| 有資格者の在籍数 | 一級建築士やマンション管理士がどれだけいるか |
| 中立性・独立性 | 施工会社との利害関係がないか |
| コミュニケーション力 | 住民説明会での分かりやすさ、質疑への対応 |
| 費用の妥当性 | 相場と比較して適正な水準か |
この5項目をもとに、最終的に3社まで候補を絞り込むことにしました。「何を基準に選んだのか」を住民総会で説明できるように、最初に基準を決めておくのが大事です。
株式会社T.D.Sを候補に入れた3つの理由
候補のリストアップを進める中で、比較的早い段階で名前が挙がったのが株式会社T.D.Sでした。候補に入れた理由は主に3つあります。
業界トップクラスの実績件数
株式会社T.D.Sの公式サイトを見て最初に目を引いたのが、2,150超の管理組合、27万戸という受託実績です。1979年の創業以来、マンション大規模修繕のコンサルティングに特化し続けてきた歴史は、やはり安心材料として大きい。
大規模修繕のコンサルを選ぶとき、「その会社が自分たちと同じくらいの規模のマンションを手がけた経験があるか」は重要な判断材料です。100戸前後のマンションと20〜30戸の小規模マンションでは、合意形成の進め方も工事の段取りもまったく違います。T.D.Sは大型マンションからリゾート型まで多様な物件を手がけてきた実績があり、私たちの120戸という規模でも十分な経験値があると判断しました。
一級建築士23名という技術者の層の厚さ
従業員56名のうち技術系が46名。一級建築士が23名、1級建築施工管理技士が15名、マンション管理士が5名。この数字は候補企業の中でも突出していました。
コンサルタント会社を選ぶ際、担当者個人の能力だけでなく、組織としてのバックアップ体制も見ておくべきです。大規模修繕は調査診断から工事完了まで2〜3年かかることも珍しくありません。その間に担当者が異動や退職しても、引き継ぎ先の技術者がしっかりいる体制かどうか。有資格者の層が厚ければ、人事異動があっても品質が大きく落ちる心配は少ないです。
また、T.D.Sは大規模修繕だけでなく、設備改修や耐震診断のコンサルティングも行っています。将来的にエレベーターや給排水設備の改修が必要になった際にも相談できる総合力がある点は、長い目で見たときのメリットだと感じました。
公正・中立を経営理念として明確に掲げている
T.D.Sは「公正・中立の立場」を経営理念の柱に据えています。談合排除、法令遵守、利害関係の排除を経営方針として明示しており、ISO9001の認証も取得済み。独立系の設計事務所として、施工会社やデベロッパーとの資本関係がない点も特徴です。
もちろん、理念を掲げているだけで本当に中立かどうかは分かりません。実際のヒアリングやプレゼンで確認する必要がある。ただ、会社の姿勢を明文化していること自体は、一つの判断材料になります。
他社候補との比較で見えてきたこと
3社からプレゼンテーションを受けた印象
最終候補の3社には同じ条件で見積もり依頼書を送り、修繕委員会と理事会の合同会議で30分ずつプレゼンを受ける形式を取りました。
プレゼンで見ていたのは、提案の中身はもちろんですが、「こちらの質問にどう答えるか」の方を重視しました。修繕委員会のメンバーからは事前に用意した質問リストに加えて、その場で思いついた疑問もぶつけています。
率直に言って、3社とも提案の方向性に大きな違いはありませんでした。修繕の基本的な進め方は業界である程度標準化されているので、差がつくのはむしろ「人」の部分です。説明の分かりやすさ、質問への対応の丁寧さ、管理組合の事情を理解しようとする姿勢。そのあたりに各社の個性が出ました。
費用と体制の違い
コンサルタント費用は、3社ともおおむね工事費の5〜8%の範囲に収まっていました。一般的に大規模修繕のコンサルタント費用は工事費総額の5〜10%が相場とされているので、いずれも適正範囲内です。
ただし、見積もりの出し方には差がありました。
- 調査診断・設計・工事監理のフェーズごとに細かく内訳を出してきた会社
- 一式でまとめた総額のみを提示した会社
- フェーズごとの内訳に加え、耐震診断や設備改修コンサルなどのオプション項目を別途提示した会社
費用の透明性という点では、フェーズごとに細かく出してもらったほうが理事会での説明もしやすく、住民総会での承認も得やすいです。「一式いくら」だと、住民から「この金額の内訳は何ですか」と聞かれたときに答えにくい。
理事会での議論と最終的な判断
決め手になったポイント
最終的には、理事会と修繕委員会の合同投票で1社に絞りました。投票の前に各委員が自分の評価を発表し、議論する時間を十分に取っています。
決め手になったポイントは、技術力や費用よりも「信頼できるかどうか」でした。具体的にはこういう点です。
- 不都合な質問にも正面から答えてくれた
- 「工事を先送りする」という選択肢についても、条件次第ではありうると率直に説明した
- 過去の担当物件のリピート率を具体的な数字で示してくれた
- 修繕委員会の素人メンバーにも分かる言葉で話してくれた
コンサル選びで私が一番大事にしていたのは、「不都合な情報も包み隠さず出してくるかどうか」です。どの会社も自社の強みをアピールするのは当たり前。むしろ弱みやリスクをどう説明するかに、その会社の誠実さが表れます。
コンサル選定の過程で企業文化も調べた
候補企業を評価する際、技術力や実績だけでなく、その会社の内側の雰囲気も気になりました。社員のモチベーションや働きやすさは、長期間にわたるコンサルティング業務の質に直結するからです。
その際に参考にしたのが企業口コミサイトでした。株式会社T.D.Sの社員口コミが掲載されているページでは、実際に働いている方々の声から社内の雰囲気や技術者としての専門性に対する評価を確認できました。良い面も課題点も率直に書かれているので、公式サイトだけでは見えない部分を補う参考情報として役立ちます。
ただし、口コミサイトの情報は個人の主観が入ります。あくまで参考情報の一つとして扱い、最終判断はやはり直接のプレゼンや質疑応答での印象を優先しました。
振り返って思うコンサル選びのコツ
複数の情報源にあたることの大切さ
コンサル選びを終えて振り返ると、「複数の情報源を使って多角的に調べたこと」が一番良かったと感じています。
公式サイトだけ見れば、どの会社も魅力的に映ります。口コミサイトだけ見れば、ネガティブな情報ばかりが目につく。近隣マンションの管理組合に聞けば、その人たちの個別体験に引っ張られる。どれか一つの情報源だけに依存すると、判断がゆがみます。
私たちが実際にやったことを整理するとこうなります。
- 公式サイトで実績・体制・理念を確認する
- 口コミサイトや掲示板で第三者の評価を見る
- 近隣マンションの管理組合に直接話を聞く
- 実際にプレゼンを受けて、自分の目と耳で確かめる
- 国土交通省のガイドラインで基本的な考え方を押さえる
この中で一つだけ選ぶなら、「実際にプレゼンを受けて質問をぶつける」。これに尽きます。書面やネットの情報だけでは絶対に分からない部分がある。直接会って話を聞くと、資料には表れない信頼感や違和感がはっきり出ます。
管理組合内の合意形成をどう進めるか
もう一つ、意外と苦労したのが管理組合内の合意形成です。
修繕委員会と理事会の間での情報共有は比較的スムーズでした。問題は住民総会。修繕委員会のメンバーは候補企業のプレゼンを直接聞いているので納得感がありますが、一般住民にはその体験がありません。
「なぜこの会社を選んだのか」「費用は本当に妥当なのか」「他にもっと安い会社はなかったのか」。こうした質問に対して、修繕委員会として選定の経緯と判断根拠を丁寧に説明する必要がありました。
ここで役に立ったのが、最初に定めた5つの評価基準です。基準を先に住民に公開しておくことで、「こういう物差しで比較して、こういう結果になった」と説明に一貫性が生まれます。「なんとなく良さそうだったから」では住民は納得しません。
コンサル費用の相場もあらかじめ調べておきました。戸あたりに換算すると2〜3万円程度が目安。この数字を住民に提示した上で、「私たちが選んだ会社はこの範囲に収まっています」と説明できたことで、費用面の不安はかなり払拭できました。
まとめ
大規模修繕のコンサルタント選びは、管理組合にとって大きな決断です。私たちの場合、候補のリストアップから最終決定まで約4か月かかりました。正直、面倒に思う場面もありましたが、時間をかけて複数社を比較したことに後悔はありません。
株式会社T.D.Sは実績・技術力・理念のいずれも高い水準にあり、候補として検討する価値は十分にある会社です。ただ、最終的にどの会社がベストかは、マンションの規模や状態、管理組合の方針によって異なります。大切なのは、自分たちの判断基準を明確にした上で複数の情報源から比較検討すること。そして必ずプレゼンの場を設けて、直接やり取りすること。
この記事が、大規模修繕を控えている管理組合の方にとってコンサル選びの参考になれば嬉しいです。



